書店員がおすすめの本を紹介するコーナー。 2023年2月号
2023/2/1(水)
不安の時代の抵抗論
田村あずみ 花伝社 定価2,200円(税込)
「現代社会においては、人々は不安のゆえに、抑圧的な権力であっても服従します。また、複雑な社会関係の中では、自らの政治的要求どころか、自らの生に痛みを強いる相手を特定することすら難しい場合があります。怒りを抵抗の原資とすることすら難しい時代を、私たちは生きています。・・・」(第6章より)
言われてみれば、いま「抵抗」という言葉が、かつてのようには力を持たなくなっているような気がします。怒るべきことなのに怒りにならない。ぼんやりとした生きづらさはあるが、それが何なのかわからない。そもそも怒るべきことなのか。抗うとしても何に抗うのか、その対象が見えてこない。等々。
著者は、40代の若手研究者(滋賀大学)。3.11以降展開された反原発デモの現場に身を置き、路上でのインタビューを繰り返しながら、それが徐々に姿を変え、消えていく中で、人間を尊厳ある者とする「抵抗」についてのイメージを描こうとしています。