書店員がおすすめの本を紹介するコーナー。 2024年2月号
今月は、この二冊です。
『苦しむ人・悲しむ人の支えとなるために-スピリチュアルケアの現場から』
窪寺俊之ほか いのちのことば社 1500円+税
「スピリチュアルケア」というと、死を前にした人の話で、自分にはちょっと関係なさそう、とついつい思ってしまいます 。
あるいは、重い病気や障害などで生活の危機に直面している人たちの問題だろうと思うかもしれません。 もちろん、それはあるでしょう。
でも、じつはよくよく考えてみると、これは誰にとっても「自分の」問題です。なぜなら人は誰も、どこかで、生きる意味や存在の価値を問われるからです。
苦しむ人や悲しむ人に寄りそうケアの現場からの様々な報告を通して、人の生を支えるものは何なのか、そして人が良く生きるとはどういうことなのか、考えさせられます。
『コモンの「自治」論』
斎藤幸平・松本卓也編 集英社 1700円+税
「自由」や「自治」は歓迎されなくなった?
そんな小見出しが、本書中に出てきます。え?自由は人が良く生きるうえで最も大切な価値ではないのか?と思いきや、今の時代、自由には自己責任がついて回るので忌避されるのだとか。
いま、効率や競争を至上とする新自由主義的な風潮が幅を利かせています。市民一人ひとりが主人公になる面倒な自治とは、しょせん馴染まないのか。
面倒でも、ごちゃごちゃしていても、自分が自分らしく生き続けられる社会になるには、自治の哲学ってやっぱり大事なんじゃないのか、と思います。
この2冊、どこかでつながっていそうな感じがして、おすすめです。