書店員がおすすめの本を紹介するコーナー。 2024年4月号
ガンディーの真実
間永次郎 ちくま新書、940円+税
タイトルの「ガンディーの真実」は、「ガンディーの真の姿」ではなく、「ガンディーが捉えようとした真実」を意味します。
本書によると、ガンディーは、「真実にしがみつくこと」を意味する「サッティヤーグラハ」という概念を、その全活動の基盤としました。衣服・食・性などの私的で日常的な事柄に関する実践から、「諸宗教の融和」といった崇高な理念や、集団的不服従運動などの社会的広がりを持つ活動まで、これらのすべてが「真実」に忠実であろうという、ごく個人的な信念の帰結です。反対に、個人個 人の日常に関わる不正への無関心や自分に対する小さな不誠実が、個人の生活の堕落に、また人種差別や植民地主義などの社会的な暴力の拡大につながっている、とガンディーは考えました。
ガンディーがこだわった「真実」とは何か。そして彼が見落としていた真実とは。本書はこれらの問題を、「食」「衣服」「性」「宗教」といった領域におけるガンディーの思想と実践を通して、またガンディーの意に反して「堕落」した彼の息子との関係を通して明らかにしていきます。ガンディーの思想と実践を知ることは、個人と政治の関係や草の根の政治活動の意義を考える上で有益です。
そういった関心を持つ人に、本書をおすすめします。