書店員がおすすめの本を紹介するコーナー。 2024年8月号
2024/8/1(木)
日本語の技術
清水幾太郎 著 中公文庫 902円(税込)
「思った通りに書くな」「模倣せよ」「短い文章を書くほうが難しい」「レトリックを駆使せよ」など、学校の作文の時間には教わらない文章術の教訓が述べられます。
そこで一貫しているのは、言葉によって現象や感覚などの混沌に秩序をつける知性の働きを尊重する姿勢です。
そうした知的な文章を作るには、ただ漫然と、だらだらと、「思った通りに」書くのではなく、方法・構成・レトリックなどに意識を払わなければなりません。
そのように能動的かつ自覚的に日本語と向き合うことで、私たちの使う言葉は明晰で豊かなものへと練り上げられます。
昨今の政治・広告・メディアなどに流布している、いい加減な言葉の使われ方に不満を持っているという人には、共感するところの多い本だと思います。