書店員がおすすめの本を紹介するコーナー。 2025年6月号

梅子と旅する。
日本の女子教育のパイオニア
いのちのことば社フォレストブックス (1500円+税)

樋口一葉の次に、5千円札の顔になった、津田梅子さん。たった6才で、日本を離れてアメリカに渡った女性です。
「あんな小さな子を、アメリカに出すなんて、母親は鬼だね」 という声が、女子留学生達を見送りに来た人達の中から聞こえたそうです。
なぜ父親ではなく母親が鬼なのか?と、ちょっと腹立たしい気がします。
当時の日本の女性に求められていたのは、良妻賢母になることでした。
日本初の女子留学生達に、日本政府が求めたことも、 「有能な人材~日本男児を育てる賢い母の育成」でした。
けれども、アメリカから帰国した梅子は、 「男性と共同して、対等に力を発揮できる女性の育成」を掲げ、 女性の自立のための教育に生涯を捧げることになりました。
梅子の目を開かせたアメリカでの生活とは、どんなものだったのか? そこで出合った人達は、どんな人達だったのか?
この小さな本は、たくさんの資料とともに、よくわかるようにまとめてあります。
あれから、約150年が過ぎました。
ハーバード大学から留学生を追い出そうとしているアメリカ…。
でも、かつてこのアメリカが、 梅子にたくさんの学びを与えてくれたのです。(め)