書店員がおすすめの本を紹介するコーナー。 2025年10月号

わすれられない おくりもの
スーザン・バーレイ 作・絵 / 小川仁央 訳 評論社 1,320円(税込)

小学校の国語の教科書には時々、とても哲学的な深い読み物が載っています。
時に「いのち」と「死」について、子どもたちに問いかける物語もあり、 大人になっても記憶の中に残ります。
『わすれられないおくりもの』もそのひとつと言えるでしょう。
みんなに慕われていた賢いアナグマが、年をとり、 そろそろ自分にも「死」がやってくることを自覚します。
アナグマは、死を恐れてはいません。
ただ、自分が死んだあとに残る動物たちのことが気がかりです。
ある日、体がが軽くなり、長いトンネルを走り抜けた先で、 ふっと自由になった気がしました。
アナグマの「死」でした。
アナグマを慕っていた森のどうぶつたちは、 アマグマと過ごした日々をふり返りながら、 その思い出を、時間をかけながら、明るいものとして受け入れていきます。
「死」は、私達に喪失に伴う痛みをもたらしますが、 同時に、残された者をより豊かな「生」へとに導く光でもあるのだと思います。
「生」は「死」があるからこそ輝き、 「死」は「生」によっておおわれる。
だからこそ、私は、より良く生きたいと思います。
そして、誰もがあたたかな「死」を迎えられる世の中であってほしいと 心から願います。 (め)