書店員がおすすめの本を紹介するコーナー。 2026年3月号

フクシマを歩いて
ディアスポラの眼から
徐京植 著 毎日新聞社 2,200+税

福島第一原発事故から15年。年月とともにフクシマのニュースは減ってきた。しかし、被災地に出された緊急事態宣言は今も終わっていない。廃炉作業は遅々として進まない。それどころか、あれだけ過酷な大事故を起こした反省も無いまま、再稼働が進んでいる。
立派な建物ばかりが目立ち、一向に人の帰らないコミュニティは果たして「復興」したのだろうか。
避難を余儀なくされ、人の繋がりや家庭や生業を破壊された人々の傷は今も癒えない。フクシマを歩きながら、一見何事もなかったかのように暮らしている人々の姿に筆者は戸惑う。
同時に、被災地から遠い地に暮らす人々の想像力の欠如と。これを「同心円のパラドクス」と筆者は表現する。
「人々の多くは被害の中心から遠いほど被害の真実に想像力を及ぼすことができない。 だが、同時に、被害の中心に近いほど、過酷な真実を直視することができず、手近な楽観論にすがろうとする。」私たちの弱さだ。そして、人間の尊厳と自由を奪おうとする勢力は、そんな私たちの空白を突いてくる。私たちは賢くならなければならない。
「日本で起きた原発事故は、・・・地球を損ね、全人類を損ね、あららゆる他者を損ねる。そういう出来事が仕出かされたのだという事実を前に、ほんとうに恐縮して、身を震わせる思いで反省をしなければならない。」 (た)









